【11/12回】 大げさではなく、立ち上がれない
どれぐらい仰向けで伸びていたでしょうか。
おそらく5分前後、この時間は本当に気持ちよかったです。
全身の筋肉を思いっきり弛緩させて、というよりも、体力の限界でしたから
自然とすべての部位がダラーンとなって目をつぶっている状態。
そのとき何を思ったか、とかそういう類の心境はなくて、
体に連動して頭の中も疲労してしまっていたのか、
まったくもって何も考えることが出来ない“無の境地”。
でもこれが不思議と心地良かったんですね。
ひと息ついて、そのままマラソンシューズに付けた
記録計測用のランナーズチップを返して記録証を受け取りに行こうと
立ち上がろうとすると、すでに足全体が凄まじい筋肉痛に見舞われて
なかなか立ち上がることが出来ません。と、そのまま「えっ、うそでしょ!?」と
つぶやくままに気付けば後ろへゴロン! まるでマンガのような有様に
恥ずかしいことこの上なかったそのとき、ふと横に目をやると
同じ境遇を経験してきたであろう初老のランナーがにこり。
「実はボクも同じようにさっきは立ち上がれなかったよ(笑)。
だからもう少しココで休んでるんだ」。
こうした圧倒的な苦楽を共にしたからこそ出来るコミュニケーションは、
何ものにも変えがたい財産ですね。
なんとか立ち上がって、足を引きずるように競技場奥のテントで
記録証を受け取って、そのまままた適当な場所で腰を降ろして休憩。
着替えようにも一気に体を動かすことが出来なくなっているので、
何をするにも休み休みなんですね。なので、受け取った記録証を
ぼんやりと眺めてココまでの道程を再度噛み締めることにしました。
もちろんその字面だけ見たところでは何の感動もないのですが、
5時間弱という時間をずーっと走り続けた現実を認識すると、
それはそれは両手で盛大に拍手したいほど
自分を褒めてやりたい衝動に駆られました。ナイスファイト、って。
人それぞれのドラマを垣間見る
周りを見渡せば、同じように余韻に浸っているランナーの姿を
そこかしこで見ることができます。そんな中、さっきゴールを切った
着ぐるみのランナーがインタビューを終えて、ボクの左後ろの方で
ようやく腰を降ろしてその着ぐるみの頭の部分を取ったときです。
なんだか付き添いの女性の様子がおかしいのでそのまま見ていたのですが、
どうやら具合が悪い様子。しかしその人が既に迅速な対応をしていたみたいで、
すぐさまドクター風の人が駆け寄ってきて処置をしてました。にしても、
どう考えても、あの着ぐるみをずーっと脱がずに走り続けて、今、
ボクが見た瞬間に脱いだというのがありありと分かります。
いやはや、そう考えると、このつくばマラソンにやって来る人たちそれぞれの
“思い”だったり“意気込み”というのは、想像を絶するものがあるんだなと。
もしボクが映画の監督だったら、人それぞれ胸に秘めたドラマを
全部聞いて回って、それをまとめたいぐらいですよ。
そしてだいぶ時間が経って会場を後にしようとどうにかこうにか歩き出しても、
やはり他のランナーも同じように足を引きずっています。
もちろんそんな満身創痍の人ばかりではないのでしょうけど、
目が行く人は総じてつらそう。でもこの光景を見てるとどこか嬉しく、
満たされたような気持ちになってしまいます。それは言うまでもないですけど、
みんな同じ時間、同じ距離を、同じように頑張って走り抜いた
ということから来てます。こんな最高な経験は普段の生活では
まず遭遇することは出来ません。なので、自然と来年も、
という気が当たり前のように湧いてきてしまっています。
◆ 下記の各ポイントも合わせてご覧ください ◆
2013年 第33回開催
◇ 【1/12回】 会場までの道のり
◇ 【2/12回】 ペースランナーを見つけるべし
◇ 【3/12回】 欽ちゃんの仮装大会的コスチューム
◇ 【4/12回】 3年ぶりの未体験ゾーンに突入
◇ 【5/12回】 ロッキーおじさんとの再会
◇ 【6/12回】 二度と軽々しく“サブ4”なんて言えない
◇ 【7/12回】 “30kmの壁”が25kmでやってきた
◇ 【8/12回】 沿道の声援のありがたみを知る
◇ 【9/12回】 フルマラソンの給水でまさかのコーラ
◇ 【10/12回】 速い遅いに関係なく、誰もが満身創痍
◇ 【11/12回】 大げさではなく、立ち上がれない
◇ 【12/12回】 フルマラソン後のタクシーが嬉しすぎる!
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