【10/12回】 速い遅いに関係なく、誰もが満身創痍
目の前に見えるのは40km地点、最後の給水所。
もはやここまで来るとかなり気は楽になります。なんせあとたったの2.195km。
本当に今回一番キツかったのが35~40km地点だったものですから、
このかなり高く立ちはだかった壁を越えた今、リタイアなんてことはありえませんし、
ましてや歩き出すことも考えられません。そんなことをしたら間違いなく
次の開催までの1年間をずーっと後悔することになるでしょうからね。
気力、体力ともにボロボロ、あえて使いたかった言葉で表現すれば「満身創痍」。
そんな状態で最後のアミノバリューをゴクリと飲み干して、
もうはるか昔のように感じるスタート時に通った風景を眺めながら
ゴールをひたすら目指します。
キツイ状態はやり過ごしたと頭の中で勝手に処理しても、体は正直なもの、
やはり言うことを全く効いてくれません。そんな時です。
あまりにも胸を打つ声援に完全にヤラれてしまったのです。
おそらく既にゴールをしてこれから帰ろうとしているランナーだったと思います。
年のころ、50代前後でしょうか。
「がんばれがんばれ! きついのは皆一緒! 負けるな負けるな!」。
声援のメッセージというよりは、その人の感情が思いっきり詰まった
心の叫びのような声に力をもらった気がします。
同じ境遇を経験した人でなければ発せられないパッションというかなんというか、
ただの声援をたやすく凌駕してしまう力強さがそこにはありました。
そしてその応援は今振り返っても胸が熱くなるようなインパクトがあります。
3年ぶりにくぐる競技場のゴール
スタート時にゆっくりと渋滞の中を走っていた見慣れた道を走り続けると、
いよいよあと残り1km。そう、沿道のみんなが口を揃えて
ゴールは目と鼻の先だと声をかけてくれます。もう無我夢中。
ラストスパートだとばかりに、自分では
足を思いっきり速く回転させていたつもりですが、
きっと実際のところはまったくスピードは出ていなかったんだろうと思います。
これほどに意思と体が連動しないことなんて普段の生活ではまずありえません。
でも、こうした貴重な体験を出来る喜びは何物にも変えがたいもの。
と、ふと自分の走るコースの両脇に目をやると、
すでにフィニッシュしたランナー達がのびのびと足を広げて座り込み、
仲間と談笑している姿があちこちで見て取れます。
そのゴールしてからだいぶ経つようなリラックスしている表情を見ると、
「ああ、この人たちはきっとサブ4は軽く達成しているんだろうなぁ」、
なんて思いつつ、自分も早くゆっくり座って足を伸ばしたい、そう願うばかりでした。
あとはもう、クリアには覚えていませんが、とにかく足を必死に回転させました。
陸上競技場が見えて、その中をガムシャラに走り、遂に、ゴール。
棄権するようなこともなく、怪我もなく、当初描いていた
目標タイムには遠く及ばなかったものの、42.195kmという
気が遠くなるような距離を走り抜いたという達成感に全身が満たされて、
気分は爽快そのもの。そして、そのまま競技場コースの中の芝生に腰を降ろして、
先ほど見た羨ましい光景を再現してみました。
倒れこむように思いっきり寝そべって、両手両足を伸ばして空をぼんやり……
なんて良い日なんだろう。
◆ 下記の各ポイントも合わせてご覧ください ◆
2013年 第33回開催
◇ 【1/12回】 会場までの道のり
◇ 【2/12回】 ペースランナーを見つけるべし
◇ 【3/12回】 欽ちゃんの仮装大会的コスチューム
◇ 【4/12回】 3年ぶりの未体験ゾーンに突入
◇ 【5/12回】 ロッキーおじさんとの再会
◇ 【6/12回】 二度と軽々しく“サブ4”なんて言えない
◇ 【7/12回】 “30kmの壁”が25kmでやってきた
◇ 【8/12回】 沿道の声援のありがたみを知る
◇ 【9/12回】 フルマラソンの給水でまさかのコーラ
◇ 【10/12回】 速い遅いに関係なく、誰もが満身創痍
◇ 【11/12回】 大げさではなく、立ち上がれない
◇ 【12/12回】 フルマラソン後のタクシーが嬉しすぎる!
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